私は2016年9月の初めに、FX(外国為替証拠金取引)に手を出しました。
と言っても最初は「本当に利益を出せるのか?」を確認するつもりだったので、証拠金は1万円のみで、レバレッジ25倍にし、ドル円を1000通貨だけで取引しました。(※利用した証券会社は楽天証券)
開始当初の9月〜10月半ばまでは、数秒〜数分で取引を終えるスキャルピングを試しましたが、しょっぱなの2日間こそ証拠金の2%相当のリターン(1日あたり約1%)を得たものの、その後は差し引きでのマイナス続き。
結局9月は、証拠金を1744円減らす羽目になりました。
10月に入っても、全く利益を出せる気がしなかったので、半ば以降には取引開始〜終了まで数日以上かけるスイングトレードに変更。
その結果、10月の取引はトータルで1334円のプラスとなり、「どうやらスイングトレードのほうが自分には合っている」と感じました。(※証拠金はまだ約400円のマイナス)
そして10月末には、テクニカル指標やファンダメンタルから「今後長期に渡ってドル円が上昇する可能性が高い」と考え、証拠金に9万円をプラスし、取引通貨量を10倍(1万通貨単位)にして臨みました。
ちなみに、この期間(2016/9〜10月半ば)に読んで勉強したFXの本は、次の5冊です。(※上から読んだ回数の多い順、著者は敬称略)
- 「投資やトレードをする時真っ先に読む本」松島修
- 「FX プライスアクション 成功の真実」陳満咲杜
- 「FX MACD+フィボナッチ 勝率アップの法則」平田啓
- 「FX ボリンジャーバンド 常勝のワザ」山中康司
- 「1日1時間で1万円稼ぐFX投資入門」Mayuhime
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結果から言うと、大統領選挙の当日(2016年11月8日)を待たずに、2万2440円の損失を出してしまいました。
具体的な状況を以下に記します。
※次以降の画像は、楽天証券ではなくアイネット証券のPC用アプリ「iNET-TREADER(デモ用)」のチャート画面を加工(トリミング等)したものです。
そのため表示されているレートが、楽天証券のものとは若干違っています。
まず2016年の初め〜11月15日(※当ページの作成時点)のドル円の日足チャートは、下記画像のとおり。
これにはテクニカル指標「GMMA」を同時に表示させており、ピンクの線の束は「短期」のEMA(指数平滑移動平均線)の束、いっぽう青い線の束は「長期」のEMAの束です。
8月あたりまでは、短期組が長期組に食い込む「鰯食い」が何度かありつつも、下降トレンド(短期組が長期組の下のまま)が安定して継続。
その後9月にはトレンドが明らかに変わり、以降は1ドル100円〜105円のレンジ相場になりました。
その中で10月初めには、短期組が上昇に転じて長期組を追い越し(トビウオ)、長期組の束も上昇に転じつつ6本の位置が逆転しています。
そしてこれを含めて、次に挙げる複数の要因があったことから、「これは大統領選の後に、ドル円が長期的に上昇していく」と予想しました。
(ファンダメンタル)
- アメリカの大統領選挙戦において、世論調査でヒラリー・クリントン候補が優勢な見通しとなっていた。
- FRBが12月の利上げ実施を匂わせていた。
- 9月以降に発表されていた各種の経済指標で、改善を示す数値が多かった。(雇用統計や賃金上昇率など)
(テクニカル)
- GMMAが上昇トレンドに転じた(「トビウオ」の)可能性があった。(※先述)
長期組の束も、まだ少しづつとはいえ、広がりつつあった。
- ローソク足のチャートで、終値が前日高値を上回る「スラストアップ」が複数出ていた。
- 日足の8月〜9月は「ダブルボトム」のようなかたちになっており、10月末以降にはネックラインを少し上抜けていた。
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「これだけ手がかりが揃っていれば、ドル円の上昇は固いだろう」と思い、長い陽線が出た翌日の10月28日に、1ドル105.244円で1万通貨を購入しました。(※下記チャートの白い楕円の時点)
しかしこの日にちょうど、「ヒラリー候補のメール疑惑を再調査する」とFBIが発表しており、当日は陰線となっています。
- クリントン氏の私用メール問題、FBIが再捜査 トランプ氏「国民はちゃんと分かっていた」(ハフィントンポスト)
http://www.huffingtonpost.jp/2016/10/29/clinton-mail_n_12707732.html
ただこの調査はあくまで、メールに機密情報が含まれているかどうかを調べる(つまり、機密情報があったとは全く確定していない)ものだったので、「ドル円への影響は短期に留まる」と思っていましたが、実際にはあれよあれよと買値から2円以上も下降。
結局11月3日には、「長期保有ならこれぐらいの幅でいいだろう」と思って設定していたストップロスの103円にかかり、あえなく2万2440円の損失が確定となってしまいました。
次項からは、この失敗にあたって思いついた反省点を列挙します。
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まず反省点の一つ目は、どの書籍でも最重要点として挙げられている「ストップロス」についてです。
今回私は、テクニカル・ファンダメンタル共に条件が揃っていたことから、「今後の上昇継続は相当に固い(確率で言うと80%ぐらい)」と考え、ストップロスを買値から2円以上下に設定していました。
しかし今になってみると、突発的な不測の事態はいつでも起こり得ると考えるべきであり、謙虚にストップロスの幅はもっと小さくしておくべき(例えば買値より50銭下)でした。
そうすれば、損失は5000円程度で収まったと思います。
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反省点の2つ目は、テクニカル分析の手法に対して、過度な信頼を抱いていたことです。
私は短い期間(2ヶ月程度)の限りとはいえ
- MACD
- ボリンジャーバンド
- GMMA
- ローソク足のプライスアクション、パターン&フォーメーション
と、幾つかのテクニカル分析を(期待を持ちつつ)勉強し、それに基づく予想を試みてきました。
しかし今は、どれも過去のチャートの動きを(ここがこうなっていたからこうだった、と)分析するには非常に役立つものの、現在よりも先のことを(例え一瞬先であっても)予測することは全くできない、と強く感じています。
例えばリアルタイムのチャートにおいて
- MACDとシグナルがクロスしても、その直後に再びクロスする。(ダマシで終わる)
- ボリンジャーバンドが収束(スクイーズ)から拡張(エクスパンション)に転じるかと思ったら、しなかった。
- GMMAで安定したトレンドで行くかと思ったら、突然変化する。
- ローソク足でスラストアップやランウェイアップが続いたが、その翌日以降はあっさり下降に転じた。
といったことは、私の僅かな経験の中でさえも多数起こり、数学や物理の法則に対するような信頼感を持ってテクニカル手法を勉強していた身としては、非常に面食らいました。
結局、既に出来上がったチャートを分析・解説するならともかく、「これからどうなるか・どうなっていくか」ということについては、どの手法を使っても「当るも八卦当らぬも八卦」(確率50%の賭け)にしかならないように思われます。
例えばテクニカル分析の解説本によく載っている問題は、いずれも既に出来上がったチャートを取り上げて「ここが買うポイント」等と解説しています。
しかし、本当に現実の取引に使える(予測を的中できる)手法ならば、そのチャート表を下敷き等で隠し(隠れている部分は「まだ知らない」ものと仮定して)、それを右に少しづつ(ローソク足が1本づつ出てくるように)ずらしていったときに、次以降(まだ見えない)のトレンドを、強い確信を持って見通せる筈ですが、実際にやってみるとどうでしょうか?
そして、「テクニカル分析にファンダメンタルも全て含まれている」というのは、今回の1回の失敗だけで「嘘っぱち」と断言できます。
ローソク足やテクニカルチャートの何処に、「ヒラリー候補のメール疑惑について、FBIが捜査を再開する」ということが盛り込まれていたというのでしょうか?
ただし、だからと言って、不規則に絶えず変動している為替レートを予想するにあたり、全く何も判断の基準がない状態では、手のつけようが無いのも確かです。
そのため
- どんな状況になったらポジションを持つか
- どうなったら決済する(利益・損失を確定する)か
- ストップロスは何処におくか
といった「
賭けのルール」をしっかり決める、という意味で、テクニカル分析を勉強して自分に合うものを選択しておくことは、必要だとは思います。
つまり、テクニカル分析は予想の確率を上げるものではなく、自分のルールを明確にする手段であり、それを行うことでようやく賭けの勝敗の確率をフィフティフィフティにできる、ということでは・・・と考えています。
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最後の反省点は、日々発表される各種の経済指標や世論調査の結果を、過度に信じるべきではないということです。
実際、今回の大統領選挙直前の期間には、
- 米国の失業率は約5%(殆ど完全雇用)
- 賃金も毎月0.数%の上昇が継続
- ヒラリー候補の支持率が、トランプ氏を僅差で上回る
等の指標や調査結果が発表されていました。
経済指標の改善が、オバマ政権(民主党政権)の成果であるならば、ヒラリー候補の勝利は確実な筈でしたが、実際には指標などに表れない現実があったようです。(例えば下記URL先の記事)
- 焦点:クリントン氏、なぜ白人の支持基盤は崩壊したか(朝日新聞)
http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKBN1390D5.html
結局、チャートやテクニカル指標、そして経済指標や世論調査にしても、現実の状況を決め細やかにカバーできるものではなく、その「背景」について情報収集や勉強を積み重ねることが決定的に重要、と感じました。
一般的な株式投資家の姿勢について「野球の試合を見に行って、選手を見ずにスコアボードをずっと見ているようなもの」ということをウォーレン・バフェット氏が言っていたそうですが、為替においても(数字の動きより)まず「選手」をしっかり見ようとする努力が、必須なのかもしれません。
とりあえず現時点(2016/11/17)では、ドル円の予想外の急激な上昇が続いており、テクニカル分析やプライスアクション的には「強い上昇トレンド」ということになりますが・・・
なにしろ、当選したトランプ氏が具体的に「政策面で何かを行った」わけではなく、私としては当面は様子見するつもりです。
(最低でも12月の利上げ実施を確認するまで、場合によってはトランプ政権が実際に動き出す来年1月まで。最悪はFXそのものを止める)
ともかく、為替相場が薄っぺらい気分でクルクル回る風見鶏のようなものであること、そしてそれ故に、そこに数学や物理学のような厳密な法則性が存在することは非常に疑わしいことを、痛感しています。
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